自社の強みと弱みをどう分析するべきか

日本において、経営戦略やマーケティング戦略を考えるときによく使われるフレームワークにSWOT分析があります。

SWOTとは、SWOTは、Strengths:強み、Weaknesses:弱み、Opportunities:機会、Threats:脅威、それぞれの頭文字をとっています。
自社の内部環境(強みと弱み)と外部環境(機会と脅威)を分析するものです。

最近では企業の戦略策定だけではなく、就職活動時の自己分析で使われるケースも増えているので、なじみのある方も多いと思います。

しかし、このSWOT分析を行うと、ほとんどの方が悩んでしまうことがあります。
それは、強み、弱みをどう分けるか、ということです。

具体的な例で見てみましょう。

企業規模が小さいことは弱みか?

例えば、私は以前、パッケージソフトウェアを開発販売している小規模なベンチャー企業に勤めていました。

では、そのベンチャー企業の「小規模」ということは、一般的には「弱み」と認識されます。
しかし本当にそうでしょうか?

確かに大企業に比べ、経営資源が少ないので「弱み」と考えられます。
しかし、意思決定が早くスピード感があるという意味では「強み」ともいえます。

大規模な仕組みや安定感という価値を求める顧客に対しては、小規模は「弱み」になるかもしれません。
しかし、フットワークが軽くて柔軟に対応してくれるという価値を望む顧客に対しては、小規模は「強み」になり得るわけです。

もう一つ、違うポイントも見てみましょう。

自社パッケージソフトの開発販売していることは、強みでしょうか?弱みでしょうか?
一般的に、自社オリジナルの製品があることは「強み」といえます。
しかし、「他社の製品を扱えない」という制約がつくため「弱み」となることもあります。

例えば、安くて使い勝手のいいパッケージ製品を探している顧客に対しては、「強み」になります。
しかし、自分たちの要望に合わせた柔軟な対応に価値を求める顧客に対しては、「弱み」にもなりえるのです。

強みと弱みは表裏一体

上記の例でお分かりだと思いますが、強みと弱みは表裏一体の関係なのです。
強みと思っていることは弱みにもなり、弱みと思っていることが強みにもなるのです。
視点、切り口にによって、どちらにもなり得るのです。

「小規模」「パッケージメーカー」というのは、あくまでも特徴でしかないのです。
それ自体では、「強み」とも「弱み」とも言えないのです。

そのため、経営戦略を立てようとSWOT分析を行ったとしても、その特徴を「強み」にすべきか「弱み」とすべきか悩んでしまうわけです。
なお、機会と脅威に関しても同様のことが言えます。

それでは、自社の強みを考える場合どうすればよいのでしょうか?

強みは顧客と競合によって決まる

では、どのような視点・切り口で強みを見つければよいのでしょうか?
それには2つのポイントがあります。

1つ目は自社が「誰に」対して、「どのような価値を提供」するかです。
つまりは、ターゲット顧客です。

2つ目は顧客が自社と、「誰と」を比較しているかです。
つまりは、競合他社との対比です。

「自社」では強みと思っていている点でも、「競合」のほうがその点で優れていると「顧客」が判断すればそれは強みではなく弱みになります。
「強み」とは顧客に対して、競合と比較された場合の、優位性・差別化ポイントなのです。

そして、「顧客」あるいは「競合」が変われば、強みも変わってくるということです。
3C分析の記事でも書きましたが顧客・競合・自社は密接に関係しているのです。

強みは提供する価値の差

強みを考えるうえで、もう一つ気を付けなければならないことがあります。
それは、強みとは機能やスペックの差ではなく、提供する価値の差だということです。

技術力のあるメーカーなどでは特にその罠に陥りがちなのですが、どうしても機能やスペックで勝負しようとしてしまいます。
しかし、顧客が求めているのは、機能やスペックではありません。
その商品・サービスが自社の課題をどのように解決してくれるのか、どのようにニーズを満たしてくれるのかという「価値」を求めているのです。

とても機能が充実しているシステムであったとしても、顧客企業がその機能を使い切れないのであれば価値はないのです。
もしかすると、余計な機能が付いている分、ユーザインタフェースが複雑で使い勝手が悪くなり逆にマイナスになってしまうこともあり得るのです。

したがって、自社の商品・サービスが顧客にとってどのような価値を提供できるかを見極め、その価値を提案することが重要なのです。

ぜひ自社の視点だけではなく「顧客」「競合」との関連性を把握し、自社の強み・優位性は何かを考えて、価値提案を行ってください。

「顧客」「競合」「自社」の関係についてはこちら

顧客・競合・自社の相互関係を見極めよう(3C分析)

自社のビジネスに密接に関係するのが、顧客と競合他社の存在です。

当たり前のことですが、自社の商品・サービスを欲しいと思う顧客がいなければ売れません。
そして、顧客がいたとしても、その顧客は自社と競合他社を比較し、どこから購入するかを決定します。
顧客の視点から見るとと、どれが自分にとって価値があるかを比較、判断しているわけです。

当然ですが顧客によって価値の基準が変わります。
そして、顧客によって比較する競合企業も変わる可能性もあります。
また、競合の状況によって、顧客が自社の商品・サービスを選ぶのか、競合他社を選ぶのかが変わります。

このように自社のビジネスにとって、顧客と競合他社というのは密接に関係しています。

3C分析

顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の観点から分析する手法は3C分析と呼ばれ、マーケティングにおいて基本となる考え方・フレームワークです。

3c

顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つは密接に絡み合っています。
これは難しい理論というわけではなく、ごく当たり前の考え方だと思います。

当たり前の考え方なのですが、逆に当たり前すぎて深く考えてこなかった方もいるかと思います。
せっかくですので、もう少し詳細に見ていきましょう。

同じものでも顧客によって価値は変わる(顧客⇒自社)

まず、顧客と自社の関係についてみてみましょう。

当たり前ですが、同じものを売っていても買う人と買わない人がいます。
それは人によって、その商品・サービスに対して感じる価値が違うからなのです。

 

ランチのお店の例

例として、ランチを食べるときのことを考えてみましょう。

ランチを食べられるお店は、ソバ屋、定食屋、イタリアン、ハンバーガショップ、牛丼屋などいろいろな選択肢があります。
さらにはコンビニや弁当屋で、弁当を買うという選択肢もあります。
そのような様々な選択肢の中から、お客様はそれぞれの価値基準にあわせて選ぶのです。

ランチはさっさと終わらせたいという忙しいサラリーマンは、立ち食いソバ屋や牛丼屋など、早く食べられるところを選ぶでしょう。
同僚とゆっくりおしゃれな雰囲気で食事したいと思う女性であれば、おしゃれなイタリアンなどを選ぶことが多いでしょう。
安くてお腹いっぱい食べたいと考えている学生であれば、牛丼屋やご飯お代わり自由の定食屋を選ぶかもしれません。

このように顧客によって、求めている価値は大きく変わり、選ぶ店も変わってきます。
つまり顧客によって、競合も変わってきます。
だからこそ、ターゲット顧客を選定し、そのターゲット顧客に対して競合よりも自社の商品・サービスの方が価値が高いことを訴求すべきなのです。

立ち食いソバ屋なのに、ゆっくり食事を楽しめおしゃれな雰囲気を求める女性にいくら宣伝しても無駄なのです。

顧客は常に比較している(顧客⇒競合・自社)

ターゲット層に自社の商品・サービスを知ってもらったとしても、それで買ってもらえるわけではありません。
顧客は常に競合他社と比較し、自分にとってどちらが価値があるかを考えています。

立ち食いソバ屋の例

先ほど例に出したので、立ち食いソバ屋で考えてみましょう。

直接的な競合としては他の立ち食いソバ屋です。
近くに競合の立ち食いソバ屋があったとすると、お客様は値段や味、ボリューム、店の混み具合、店の雰囲気など様々な比較をするでしょう。
同じ立ち食いソバ屋であっても、これほどさまざまな比較ポイントがあります。

では、周りに他の立ち食いソバ屋がなかったとします。
直接の競合がないから安心かというと、そうとも限りません。

立ち食いソバの価値・魅力は、早い、安いということが挙げられます。
隣に牛丼屋があったとすると、早い、安いという同じ価値を提供しているため競合となってきます。
早くて安いランチ、という価値」求める忙しいサラリーマンは、ソバ屋と牛丼屋を比較するのです。

そして、牛丼屋ではなく立ち食いソバ屋を選ぶ理由としては、「牛丼よりカロリーが低いから」ということかもしれません。
そうであれば、「早い・安い」に加えて「ヘルシー」という価値を訴求すれば効果的なのかもしれません。

競合となるのは同じ物を売っている直接的競合だけではなく、同じ「価値」を提供している間接的競合も含まれていることを忘れないでください。

BtoBでも同じこと

この考え方はBtoBにおいても同じです。

例えば、自社が営業管理システム(SFA)を販売しているとします。
この場合、ターゲットは営業に力を入れている企業と考えられます。
下請け中心で、取引先が少数の企業にとっては、得られる価値が少ないかもしれません。

世の中には様々な営業管理・SFAの製品・サービスがありますので、顧客企業はそれらを比較します。
比較基準としては、機能や価格だけでなく、使いやすさ、メンテナンスしやすさ、サポート体制なども含まれてくるでしょう。
そして、自社の製品が、競合製品よりも価値が高いと判断されれば購入してもらえるのでしょう。

しかし、ここで顧客企業が本当に求めるもの(課題・ニーズ)を考えてみましょう。
それは、売上拡大であることが多いと思われます。

すると、ある企業は営業管理システムよりも、そもそも営業の教育の方が重要と考え営業研修を受けさせた方がよい、と考えるかもしれません。
あるいは、広告宣伝に力を入れたほうがよい、と考える企業もあるかもしれません。

顧客企業が求める価値(課題・ニーズ)によっては、研修会社や広告代理店も競合となってくる可能性がありわけです。
そうなると自社の営業管理システム(SFA)を選んでもらうためには、異業種の競合よりも、より高い価値を提供できるものであることを訴求する必要があります。

それは、「営業支援システムを導入することで、営業活動の効率化はもちろん、営業プロセスを見える化することで営業活動の継続的な改善が可能となります。短期的な売り上げではなく、長期的に売れる仕組みを構築できます」ということかもしれません。(あくまでも例です)

このように、顧客が変われば競合が変わってきます。
また、競合が変われば、訴求ポイントも変わってきます。

このように、顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)の3つは密接に絡み合っています。
経営戦略を立てる際にはまずこの3C分析を行ってみてください。