なぜターゲット絞る方が顧客数が増えるのか

前回、ターゲティングの重要性とセグメンテーションについてお伝えしました。

ターゲットを絞ることが重要だというと、「絞ると顧客が減ってしまう」と心配される方が多くいます。
しかし、正しくターゲットを絞ると、顧客は減らずに増えます。
逆にターゲットを絞らず万人受けを狙うと、顧客は減ってしまう可能性が高いのです。

それは、なぜか?
現代では物も情報も溢れており、顧客のニーズ・課題も多様化しています。
そんな中で「万人受け」するものなどあり得ないからです。

仮に「万人受け」を狙ったものは、結局ポイントがぼやけてしまいます。
そして、ターゲットを絞って専門化した競合に負ける可能性が高くなってしまうのです。

ランチで考えてみると

具体的な例として、ランチで考えてみましょう。

3C分析の記事でも書いたようにランチタイムでも、いろいろなニーズがあります。

例えば

  • ランチはさっさと終わらせたいという忙しいサラリーマン
  • 同僚とゆっくりおしゃれな雰囲気で食事したいと思う女性
  • 安くてお腹いっぱい食べたいと考えている学生

これらの人全員を満足させられることはできるでしょうか?

「うちの店は、和洋中何でもそろっていて、おいしくて安くて早くて量が多くて、でも店内の雰囲気はおしゃれでゆったりしています」

という店はあり得ないですよね。
さっさと立ち食いソバを食べるサラリーマンが集まる店が、ゆっくりおしゃれな雰囲気にはならないのです。

そして、近隣にある立ち食いソバ屋やおしゃれなイタリアンなどに、上記の顧客は取られてしまいます。

もう少し絞ってラーメン屋さんでは

ランチだと広すぎるということで、もう少し絞ってラーメン屋さんを考えてみましょう。

「老若男女問わず万人受けを狙うラーメン屋」と「ターゲットを絞った専門的なラーメン屋」で勝負した場合どうでしょう?
おそらく「万人受けを狙うラーメン屋」は勝てないでしょう。

独自性のあるラーメン二郎

ラーメン二郎はそのボリュームや味付けなど、かなり独自性のあるラーメン屋さんです。

ラーメン二郎のメインターゲットは、お腹を空かせた大食いの大学生です。
そのメインターゲットに合わせたボリューム、味付け、値段、店づくりとなっています。

そのため女性や家族連れなどは、ほとんど来店しないでしょう。
つまり、ターゲット以外の顧客は、ある意味捨てているのです。

しかし、ラーメン二郎は学生を中心とした顧客によって、連日長蛇の列ができています。
「ジロリアン」と呼ばれたり熱狂的なファンがいるほどです。

女性向けラーメン

逆に、女性向けのラーメン屋さんも最近増えてきています。

それらのお店ではヘルシーさやおしゃれな店舗づくりなどにより、他のラーメン屋さんには入りづらいと考えている女性顧客を獲得しています。
そしてラーメン二郎とは逆にボリュームを求める学生は、あまり入らないでしょう。

上記の例のようにターゲットを絞って、専門性、独自性を追求することで、そのターゲット層に強く訴えかけることができます。
そして、他店との明らかな差別化を図れるため、顧客を獲得することができるのです。

 BtoBでも同じこと

例えばWebサイト制作会社で考えてみましょう。

「うちの会社はお客様の要望に合わせてどんなWebサイトでも制作します!」

というのと、

「うちは飲食店専門のWebサイト制作会社です。飲食店ならではのニーズにお応えし、料理の写真を撮る専門のカメラマンもいて・・・」

といった2社がいたとします。
どちらの制作会社が飲食店のオーナーに響きやすいかというと、おそらくターゲットを絞り専門性を訴求した後者の方でしょう。
※飲食店専門というのはあくまでも例です。さらに絞る必要があるかもしれません。

大企業であればある程度「様々な顧客の要望にも合わせる」ことは可能かもしれません。
しかし、リソース(資源)の少ない中小企業では、全方位的な対応はまずできません。
そのため、ターゲットを絞り、そこに関しては大企業にも負けないノウハウを貯めることで顧客に選んでいただくことができるのです。

このように「広く浅く」でははなく、「狭く深く」攻めたほうが顧客の心に響く提案ができ、顧客を獲得できるのです。
そして、「狭く深く」追求したノウハウは、類似のターゲット層に横展開できる可能性も出てきます。
先ほどの飲食店の例でいえば、他の専門店を新たにターゲットにすることができるかもしれません。

まとめ

なぜターゲットを絞ることが顧客増加に繋がるのか。
そのまとめです。

  • 顧客のニーズは多様化しており、万人受けするものなどあり得ない
  • ターゲットを絞らないと、ターゲットを絞った専門性のある競合には勝てない
  • 狭く深く追求すれば、別のターゲット層にも横展開できる

ただし、ターゲティング(ターゲットの絞り方)を間違えないようにしなければなりません。
狭すぎてそもそもの母数(見込み客の全体数)が減ってしまったり、逆に広すぎて顧客に響く提案ができなかったりする可能性もあります。

企業の目的は収益を上げることですから、適切なターゲット層と見つけ出しましょう。
そのためにはまず自社の提供する価値を把握し、その価値に対して適正な対価を払ってくれる顧客を見つけることが重要です。

ターゲティングとセグメンテーションの考え方はこちら

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野村 昌平

野村 昌平

中小企業診断士/ウェブ解析士/VEスペシャリスト
/一般社団法人データマーケティングラボラトリー理事
「企業に選ばれる個人事業者を育成する」というミッションを掲げて活動中。

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